今年70周年を迎える鹿児島の劇団「白鳥バレエ」の記念公演「平家物語」。華麗な平安絵巻は、白鳥バレエを創設からけん引してきた白鳥見なみさんの創作バレエです。主役で娘の白鳥五十鈴さんへの技術と魂の継承を交えながら公演までの奮闘を伝えました。
バレエで表現する平家物語
【平家物語】
平安時代後期、栄華を極め、その後衰退した平家を描いた「平家物語」。美しい衣裳の女性たちが酒や踊りでもてなす宴のシーンは、華麗な平安絵巻そのものです。創作バレエ「平家物語」は、白鳥バレエ創立70周年記念公演として、先月30日、上演されました。
白鳥バレエが、鹿児島に誕生したのは、1949年(昭和24年)。「白鳥会」が始まりです。それから6年後、バレエ団は当時16歳の白鳥見なみさんに託されました。見なみさんは、プリマとして踊りながら、指導や数々のバレエ作品の制作にも取り組みました。海外の作品ばかりしかないバレエで、日本の話を作りたいと、見なみさんは考えたのです。1990年に初演された「平家物語」は、2009年、ご自分のファイナルステージでも踊った、白鳥バレエの、白鳥見なみさんの、魂ともいえる作品です。今回、平清盛の娘 德子は、見なみさんの娘 白鳥五十鈴さんにすべてを託されました。


【公演1週間前】
公演まで1週間となったこの日、スタジオには芸術監督の白鳥見なみさんと德子を演じる白鳥五十鈴さんの姿がありました。高倉帝の妃となった德子は、高倉帝が自分に仕える娘 小督を、寵愛すると知って、嫉妬する場面。五十鈴さんの踊りに見なみさんは納得できません。
「動きが多すぎる!」
動きで德子の感情を表現しようとする五十鈴さんに、見なみさんは感情は内面から溢れるものだとして意見がぶつかります。伝えていく立場と受け継ぐ立場の2人が思いをぶつけ合って作りあげた白鳥バレエの「平家物語」どのような舞台になったのでしょうか。70周年記念公演の幕が上がります。
【公演当日】
揺れ動く感情を動きで表したい五十鈴さんに、「高倉帝に嫁いだ德子は、感情を胸に秘め、表に出すことはない」と伝え続けた見なみさん。この日、德子を踊る五十鈴さんの胸には、母見なみさんの言葉がありました。德子の思いを胸に全身全霊で踊ります。
五十鈴さんは見なみさんの感情を表に出さない振付で踊り抜きました。五十鈴さんが、胸に強く秘めた、德子の感情は舞台に溢れ、悲しみ、苦しみ、絶望する德子の心情が見事に表現されました。母見なみさんの魂を受け継いだ白鳥五十鈴さんらしい德子が誕生したのです。
【白鳥バレエ】
西洋のバレエで日本の伝統や文化の表現に挑戦し続ける白鳥バレエ。70年の歳月をかけ、白鳥見なみさんが築いた魂は、今しっかりと次の世代に受け継がれようとしています。受け継ぐ魂に五十鈴さんらしさも加えながら、2人の奮闘はこれからも続きます。