かごしまの伝統野菜、日置市東市来町の「
桜島だいこんに花岡こしょう、伊敷長なす、 吉野にんじん・・・。
これらは、 鹿児島の人や風土とかかわりが強い「かごしまの伝統野菜」です。
1945年以前から存在していたものを伝統野菜といいます。
そのひとつに、日置市東市来町の「養母すいか」があります。
希少で、「 幻のすいか」とも呼ばれている「養母すいか」を未来につなぐ取り組みが、いま始まっています。
まず、伝統野菜に詳しい、鹿児島大学の技術専門職員・
県内各地の伝統野菜の種を見せてくださいました。
これまでに中野さんが集めたのは約100種類。
後世に残すため、大学で保存しています。
郷土の食文化を支えてきた野菜ですが、
「近年、姿を消しつつあるものが多い」と、中野さんは話します。
伝統野菜が作られなくなってきた主な理由は、
「生産者の高齢化」と、
「生産効率のいい市販品種が普及したこと」。
食べ物が少なかった時代に、命を繋ぐため育てられていた伝統野菜。
中野さんは、『平和』や『食』の大切さを知る意味でも、残すべきだと考えています。
中でも、特に危機をむかえているのが、富山の薬売りが持ってきて広まったと言われる「養母すいか」です。
最盛期は昭和30年~40年ごろで、東市来町養母地区のほとんどの農家が栽培していたそうです。
しかし、数が多くとれないなどの理由から、育てる人が少なくなっていきました。
現在、日置市東市来町内で育てているのは、2軒。
そのうちのおひとり、
「養母すいか」を35年作り続けています。
「養母すいか」の見た目は、一般的なスイカと変わりません。
しかし味は糖度が低く、果肉が黄色です。
食感は「梨」に近い感じ!?
その「養母すいか」を未来につなぐ、新たな取り組みが始まりました。
5月中旬、鹿児島大学の中野さんは、日置市の鶴丸小学校で伝統野菜についての授業を行いました。
戦中戦後、ご先祖さまの命をつないでくれた伝統野菜。
食べ物がなかった時代、「養母すいか」を食べて命をつないできている。
そのおかげで今、ここにいる。
絶やすわけにはいかない。
中野さんの話を聞いた鶴丸小学校の子どもたちが、「養母すいか」作りに挑戦することになりました。
初めてふれる「養母すいか」の苗を、丁寧に植えていきます。
3週間後。
受粉の授業です。
めしべとおしべを合わせ、手作業で受粉していきます。
せっかく育ってきたスイカですが、中には動物に食べられてしまったものや猛暑で割れてしまったものも。
それでも、子どもたちはあきらめません。
苗を植えてから約2カ月。
いよいよ収穫の日です。
立派に成長していました。
毎日様子を見にきたり、大事に育てたかいがありました。
戦後77年の夏。
伝統野菜「養母すいか」は、今を生きる子どもたちに命の大切さを教えてくれました。
鶴丸小学校によると、来年もこの取り組みを行う予定だということです。