がけ崩れを学ぼう~シラス編~
鹿児島大学の井村隆介准教授と学ぶ“ぼうさいの時間”。
今月のテーマは
「がけ崩れを学ぼう~シラス編~」です。
かつて、がけ崩れが発生した現場を歩き、心構えを学びます。
◆井上彩香アナウンサー
先生、今回はなぜこのテーマなんでしょう?
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
鹿児島にはシラス台地が広がっている。
小学校でも「シラス台地」という言葉が(授業に)出てくるぐらい、
みんな知っている。
実はそこのがけで、よくがけ崩れが起こっている。
きょうはこれについて勉強してみましょう。
シラス台地とは、いまから約3万年前、
姶良カルデラが大噴火した際の火砕流が堆積したものです。
県本土の面積の6割以上を占めています。
火砕流が固まっていない状態で積みあがっているため、
他の地質に比べて
一気に崩れやすいという特徴があります。
全国でも多い鹿児島のがけ崩れ
2019年には梅雨前線などの影響で、
シラス台地での土砂崩れが相次ぎました。
鹿児島市本城町と曽於市では、高齢の女性が土砂に巻き込まれて死亡。
JR南鹿児島駅近くのがけは、大きく崩れました。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
土砂災害にはがけ崩れのほかに、土石流や地すべりがあるが、
シラスの場合、がけ崩れになることが非常に多い。
ここでクイズ
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
Q.去年鹿児島で発生したがけ崩れの数は?
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
A.去年だけで、69件のがけ崩れが起こっている。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
昔は、「人が死なないと梅雨は明けない」と言われるくらい、
梅雨末期の集中豪雨でシラス崩れ、がけ崩れがたくさん起きていた。
県内の去年(2021年度)のがけ崩れの発生件数は、
多い順に鹿児島市19件、さつま町10件、出水市が6件。
また、全国で見ると2021年までの10年間に発生した
県内のがけ崩れの件数は、
神奈川県についで2番目に多くなっています。
がけ崩れの現場を歩こう
◆井上彩香アナウンサー
鹿児島市照国町にやってきました。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
高さが100mぐらいのシラス台地があります。
上には、城山公園展望台がある。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
その地形やそこに生えている木の様子を見ると、
がけ崩れが頻繁に起こってきたのがわかる。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
起こってきたということは、
将来また起こるかもしれない
ということを意味している。
がけ崩れを学ぶには、自治体が配布している
ハザードマップの確認が不可欠です。
◆井上彩香アナウンサー
今、私たちがいるのが…
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
緑と白の境界。
緑は洪水になった時(天文館側は)浸かるかもしれない。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
城山は、水には浸からないけどその奥に
黄 色(土砂災害警戒区域)と
オレンジ(土砂災害特別警戒区域)がある。
◆井上彩香アナウンサー
水には浸からないけれども、別の危険がある。
自分がどんな“地形”に住んでいるか、
もしもの場合はどこに避難するのか、
考えておきましょう
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
縄文時代にはここまで海があった。
海で削られたがけ。
だから急ながけが立っている。
がけをよく見ると、草しか生えていない所があります。
ここでは過去にがけ崩れが起き、
元々、生えていた大きな木などが流されたと考えられます。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
がけ崩れといっても、人が住んでいないところで起これば完全に自然の現象。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
ここを見てもらうと分かる。
すごく急で、途中から平坦になる。
崩れてきたものがたまって、斜面になっている。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
斜面に住んでいる方は、
後ろのがけが崩れると土砂が来る可能性がある。
◆井上彩香アナウンサー
そういう地形の成り立ちは変わらない?
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
変わらない。
がけがある限り永遠に続く。
がけ崩れの心構え
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
ハザードマップのただ色が付いた平面を見るのではなく、
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
色と色の境界って何だろう、
何が違うんだろうというのを実際に見ていただきたい。
地形が教えてくれる災害の教訓。
命を守る一歩として、見方を変えてみると良いかもしれません。