天気予報の言葉を読み解こう~雨編~
鹿児島大学の井村隆介准教授と学ぶ“ぼうさいの時間”です。
県内も梅雨シーズンに突入。
天気予報で伝えられる“雨に関する情報”の言葉の裏側を学び、梅雨に備えます。
去年7月、梅雨明け間際の北薩地方は、記録的な大雨となりました。
住民「全部ヘドロが入り込んで」
住宅や商店街は水につかり、
土砂崩れや道路の陥没が発生。
梅雨シーズンに突入
奄美は、今月11日に梅雨入りしました。
平年は奄美が5月12日頃、九州南部は5月30日ごろ梅雨入りします。
◆井上彩香アナウンサー
先生。今回の授業は“天気予報の言葉を読み解こう~雨編~”です。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
5月中盤に入ってきて梅雨が意識される。
天気予報の雨の情報で使う言葉に、どういう意味があるんだろうということを勉強したい。
「降り始めからの雨量」とは
KTSが去年7月12日、夕方に伝えた天気予報では、
「降り始めからの総雨量は、さつま町柏原で500ミリを超えました。」という表現が使われています。
天気予報でよく耳にする「降り始めからの雨量」には、どういう意味があるのでしょうか。
鹿児島市東郡元町の鹿児島地方気象台にやってきました。
気象情報官の轟日出男(とどろき・ひでお)さんです。
◆轟さん
こちらが観測機器を設置している露場(ろじょう)というところです。
ここでは、雨量や温度などを観測しています。
鹿児島市の雨量は、この“転倒ます型雨量計”と呼ばれる機器で観測されます。
◆轟さん
直径20cmの受水口から雨が中に入り込み、そこで機械的に動作が行われます。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
地面に直接置くと跳ね返った雨が入るので、少し高いところに置いてある。
転倒ます型雨量計は、県内各地に43カ所、全国に約1300カ所設置されています。
鹿児島地方気象台では、1968年から50年以上に渡り、この機器で雨を観測してきました。
◆轟さん
いずれか一方のますに、一定量の雨水が溜まるとその重みで倒れる仕組みです。
1回倒れるごとに、0.5ミリ観測しています。
◆轟さん
次第に水が溜まって、カタ、カタ。
計4回倒れたら、降り始めからの雨量が2ミリということになります。
ただし鹿児島市の雨量は、あくまでも転倒ます型雨量計のある東郡元町のものです。
同じ鹿児島市でも、自分が住む地域でそれ以上の雨が降っている可能性があることも覚えておきましょう。
「1ミリの雨」とは?
鹿児島市の平和リース球場にやってきました。
天気予報で耳にする「1ミリの雨が降った」という表現。
「1ミリの雨」を小さな容器に入れるとわずかな量ですが…。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
この球場のグラウンド部分は、約13000平方メートル。
「1ミリの雨」の雨は大した事ないと皆さん思うかもしれないが、球場全部に降ると、重さにして13トンになる。
これが鹿児島市全域に降ると、もっとすごい。
クイズ・「平年値」とは?
雨の量をシミュレーションしたところで、クイズです。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
天気予報でよく使われる「平年値」がどういうものか知っていますか?
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
「平年値」とは、30年間の値を平均したものです。
10年に一回見直されます。
現在使われているのは2021年に改正されていて、1991年から2020年までを平均した値になります。
去年7月に降った大雨。
さつま町柏原のケースを見てみましょう。
「平年値」は463.4ミリ(1991年~2020年の7月に降った雨量の平均値)です。
去年は7月8日~10日のわずか3日間で553.5ミリを観測し、天気予報では「7月の一カ月分を超える」という表現が使われました。
自分が住む地域の「平年値」を知っていれば、今の雨の状態をイメージでき、避難行動につなげられるかもしれません。
【まとめ】天気予報は、命を守るための情報でもある
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
天気予報の情報を正しく理解しておくことによって、自分がどういう場面でどういう行動をとらないといけないか、タイミングやギアの上げ方や用心の仕方は全部変わってくる。
◆鹿児島大学 井村隆介准教授
天気予報は、命を守るための情報でもあるんです。