大噴火が起きたらどうなる? 桜島・黒神埋没鳥居
鹿児島大学の井村隆介准教授とともに、防災に関するさまざまな知識を深める「井村隆介の防災をマナブ」です。
今回は、鹿児島のシンボル 桜島を訪ねました。
(2018年11月1日 放送)
今回のテーマは?
●気象予報士・渡司陵太
今回はどんなことをマナブんでしょうか?
●鹿児島大学・井村隆介准教授
きょうは桜島にやってきました。
私たちは普段、桜島から火山灰が降ってくるのを見ているわけなんですけど、火山が噴火したときには、火山灰以外にもいろんなものが出てくるんですね。それをきょうは見たいと思います。
黒神埋没鳥居
井村准教授と訪ねたのは、桜島の東側にある黒神埋没鳥居です。
1914年・大正3年に発生した大正大噴火。
このときの噴火で火山灰に埋もれた神社の鳥居が、今も残されています。
●気象予報士・渡司陵太
桜島の中では有名な観光地で「鳥居が火山灰に埋まっている」というのは知っている方が多いと思うんですが、どういう点に着目したらいいんですか?
●鹿児島大学・井村隆介准教授
大正大噴火で大きな噴火が起こって鳥居が2mぐらい埋まっているんですけど、火山灰や軽石が大量に降ったことを知っておいていただきたい。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
もうひとつは降った時間ですね。鹿児島で火山灰を経験していると、これだけ積もったのなら「何週間もかかった」と思う方が多いと思うんですけど…
●鹿児島大学・井村隆介准教授
これは一晩くらいで積もったものになります。
どのように鳥居が埋まった?
ではどのように鳥居が埋まったのでしょうか?
ヒントは近くの地層に現れていました。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
下が大正大噴火でできた地層。
上が大正大噴火の後、きょうまでの噴火でできた地層です。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
噴火の火山灰は、森の中にちゃんと積もっているんですね。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
桜島は1年に1000回くらい噴火しています。
大正大噴火から何十年も経っているので、その間に1万回、10万回も噴火しているわけですよね。
その期間で、上の地層はこれだけしか、たまっていない。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
下の地層は大正大噴火1回なんです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
私たちは桜島の噴火を毎日のように見ていますけど、大正大噴火は何十万倍も違うことになってきます。
大噴火で降ってくるものは…
さらに大正大噴火の地層をよく見てみると…
●鹿児島大学・井村隆介准教授
このあたりは、火山灰ではなくて軽石・れき(礫)でできているのがよくわかります。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
こんなものが空からバラバラ降ってきて、一晩のうちに2m積もったというのが大正大噴火です。
●気象予報士・渡司陵太
先ほどの鳥居のところは、全部火山灰というわけではないんですね。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
こういう軽石で埋まっています。
軽石・火山灰は桜島以外にも…
たった一晩で、軽石や火山灰が降り積もった桜島。
しかし、注意が必要な場所は桜島(島内)だけではありません。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
対岸の 垂水でも1m以上 積もっていますので、風向きが全く逆だと鹿児島市街地もそれなりの降灰の可能性があります。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
大正大噴火クラスの噴火が予測されるという情報が出たときは、本当にすみやかに行動をとらなければならないと思います。
鳥居が残された意味を考える
およそ100年前の大噴火の痕跡。
最後に井村准教授はこう語りました。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
大正大噴火の後、集落の方々はここに戻ってきて、自分たちの集落がめちゃくちゃになっている姿を見て、ショックを受けたと思うんですけど…
●鹿児島大学・井村隆介准教授
これを後世に残そうと、大正大噴火のことを将来の人々にも覚えておいていただこうということで残されたと思います。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
「こんなことが起こったんだよ。だから噴火前に逃げなさいよ」というのを伝えてくれていると思うんです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
今こそ私たちは、この鳥居を通じて、そのメッセージを受け取らなければならないはずなんです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
「災害は忘れたころにやってくる」というのはよく言われることですけど、「災害を忘れちゃいけないよ」というのを伝えてくれていると思います。
(2018年11月1日 放送)