津波に備える!東串良町の防災
鹿児島大学の井村隆介准教授とKTSウェザーセンターの渡司陵太が、火山、地震、大雨など、様々な防災について伝える『井村隆介の防災をマナブ』
南海トラフ地震などで太平洋で津波が起きると、県内は大津波がやってくるおそれがあります。
志布志湾では10m近い高さの津波が予想されていますが、どう備えるべきなのか?
県内で一番、施設の整備がすすんでいるという東串良町を訪ねました。
津波の危険性がある東串良町
鹿児島大学の井村 隆介准教授とともに防災に関する様々な知識を深める「井村 隆介の防災をマナブ」です。
●気象予報士・渡司陵太
志布志湾にやってきました。私たちの後ろに見える東串良町はどんな場所なんでしょうか?
●鹿児島大学・井村隆介准教授
太平洋で大きな地震が起こった時には、志布志湾に津波がやってくる可能性があります。東串良町を中心に志布志湾沿岸の地震・津波対策について学びたいと思います。
志布志湾に面した鹿児島県の東串良町。
県の想定では最大7.2mの大津波がくるおそれがあります。
標高が低い場所が多く、肝属川などを津波がさかのぼると、町の広い範囲が浸水してしまうおそれがあります。
各集落に避難階段を設置
海に近い集落に階段がありました。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
地震で津波がやってきた時には、この辺りは水につかる可能性がある高い所が周辺に無いんですが、ここには縄文時代にできた砂丘が標高10mくらいあるんですよ。
そこに登れるように東日本大震災のあとに住民のために作られた避難階段です。
津波からの避難階段は、町の人が避難してくる標高10mの小学校にも設置されていました。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
志布志湾沿岸の津波は10m弱が想定されていますが、ひょっとしたらそれを超えてくるかもしれない。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
地面(1階)では危ないということで、小学校の2階建ての屋上に上がれるように外側に非常階段が付けられたのがこれなんです。
東日本大震災のあと東串良町は各集落に津波から避難するための設備を整えました。
鹿児島県内初の津波避難タワー
内陸にある下伊倉地区をたずねました。
津波が入ってくる肝属川に近く、標高の高い山までおよそ1km離れています。
●気象予報士・渡司陵太
下伊倉地区にやってきました。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
ここは肝属川の右岸になるんですけど、標高が2~3mしかないここでの津波対策ということで津波避難タワーが作られています。
高さ8mの津波避難タワー。
鹿児島県内で最初に作られた津波から避難するためのタワーです。
●気象予報士・渡司陵太
屋上には防災倉庫があるんですね。
●下伊倉振興会 西之園 京人 会長(取材時)
ブルーシート、投光器、鍋類、発電機、燃料(油)などがあります。津波避難をするときの集まる所にしています。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
東日本大震災のあと行政(東串良町)が、この低い所に住んでいる方々の避難をどうす
るか考えました。
地域の住民も「私たちはどうすればいいの」という要望を出して、双方が理解してできたのが避難タワーです。
避難の拠点となる施設
東串良町ではこんな施設まで整備されていました。
役場から離れた海の近くにある防災センターです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
大きな津波がやってくるとここだけ島みたいに取り残される可能性が高いんです。
島に残された方が生活するうえで物資の供給、生活拠点になる場所です。
防災センターは、津波による孤立を想定して、ヘリポートからの救助や物資の補給ができるようになっています。
また、長期的に避難生活ができる和室もあります。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
食器棚がありますけど、炊事ができる施設があります。
洗面脱衣所でシャワーをあびることができます。
避難してくるだけではなくて、その後の避難生活ができるように工夫されている場所です。
こうした防災について東串良町の担当者は…
●東串良町危機管理係 内村 大輔 係長(取材時)
ここ近年の災害が巨大化していると感じています。
東串良町としては津波避難タワー、防災センターを整備して町民の皆さんの生命・財産を守っていきたいと考えています。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
鹿児島県の中でも一番、津波防災の施設がそろっている所だと思います。
県内の他の地域にも、同じような施設が広がっていくと良いと思います。
(KTS Live News 2020年7月 放送 「井村隆介の防災をマナブ」)