ちゃんと知ってる? シラスの基礎知識
鹿児島大学の井村隆介准教授とともに、防災に関するさまざまな知識を深める「井村隆介の防災をマナブ」です。
今回は「シラス台地」の基礎知識を学びます。
(2019年10月2日 放送)
シラスはどうやって できた?
●気象予報士・渡司陵太
ヘルメットをつけて、大きな崖の目の前にいますが、今回は何をマナブんでしょうか?
●鹿児島大学・井村隆介准教授
鹿児島では雨が降るとシラス災害というのがよくいわれるんですけど「そもそもシラスって何なの?」というの学んでいきたいと思います。
今回は九州南部に広く分布する土「シラス」について学びます。
雨に弱い 崩れやすい
といったイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?
●鹿児島大学・井村隆介准教授
今から3万年前、桜島の北にある姶良カルデラが大噴火をして、そのときに出た噴出物がシラスなんです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
ここだけで80mくらいの高さの崖があります。最近の研究では20時間ぐらいで積もったと考えられています。
●気象予報士・渡司陵太
え!? 20時間でこれが全部…
●鹿児島大学・井村隆介准教授
それぐらい大きな噴火が3万年前に起こって、その痕跡を私たちはシラスとして見ていることになります。
シラスは崩れやすい?
シラスと言えば「急斜面」「崩れやすい」というイメージがあります。
●気象予報士・渡司陵太
シラスはどういう特徴をもっているんでしょうか?
●鹿児島大学・井村隆介准教授
この崖を見て頂くとわかるんですけど、これは人が土を採るために切った崖なんですけど、垂直で切り立った崖になっています。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
こんな切り立った崖でも実は安定している。
雨が降っても、何年もこのまま、全然壊れていないですよね。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
「シラスって崖崩れになりやすいんじゃないの?」とみなさん思っているかもしれないんですけど、シラスそのものはとても強いんです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
一方で、後ろの方に目をもっていくと、このあたりシラスが分布しているんですけど…
●気象予報士・渡司陵太
向こう側も急斜面ですね。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
切り立った崖の上に木が生えているのがわかると思います。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
あのように木が生えることによって…
●鹿児島大学・井村隆介准教授
シラスの表面が土壌化というんですけど、やわらかい土壌ができます。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
雨が降るとシラスの上に重りが乗っているような感じになるんですね。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
その部分が雨の時に崩れるというのがシラスの「表層崩壊」というものになる。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
その時には普通の地質よりも、ずっと崩れやすくなっている。
実際の崖崩れ現場を訪ねてみると…
実際の現場を訪ねてみました。
2019年7月の大雨で複数の崖崩れが起きた場所です。
●気象予報士・渡司陵太
大きな崖崩れの跡が見えますね
●鹿児島大学・井村隆介准教授
これが典型的なシラスの崩壊と考えて頂ければいいと思います。斜面に木が生えているような所で土砂崩れが起こっています。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
このあたりはずっとシラスの崖が続いています。ここを見ると何カ所も崩れていると思うんですけど、シラスの斜面がある所というのは、それだけで土砂崩れのリスクがあります。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
どこが崩れるかというのは予測が不可能。シラスがある限り、どこが崩れてもおかしくありません。
崖崩れが起きた場所を見ると、崖が崩れたにもかかわらず、その斜面はなだらかになっていません。崖のままの状態となっています。
ここに木が生えると再び崖崩れが起きやすい危険な崖となります。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
これだけの崖ができるためには、3万年前に(噴火で)埋まってしまった所から、何回も崩れないとこうした崖ができません。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
シラスというのは連続雨量で200ミリを超えて、300ミリに近くなってくると、どこでも崖崩れが起こりうると考えた方がいいです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
気象台から注意が出される状況「多い所で24時間で200ミリぐらいの雨が降りますよ」というのは九州南部・鹿児島ではあることです。
●鹿児島大学・井村隆介准教授
シラスの崖のそばに住んでらっしゃる方は、大雨の情報が出されたら「防災意識のギア」を一段上げるようになっていただきたいです。
(2019年10月2日 放送)