【動画】大きな川の防災・川内川
鹿児島大学の井村隆介 准教授とともに防災に関するさまざまな知識を深める「井村 隆介准教授の防災をマナブ」です。
きょうのテーマは「川」です。
小さな川と比べて大きな川ではどんな水害のリスクがあるのか?
県内を流れる川内川(せんだいがわ)を例に、洪水や防災について考えます。
(2020年12月8日 放送)
※動画および写真記事でご覧いただけます
【動画】
テーマは大きな川の防災・川内川
●気象予報士・渡司陵太
今回は湧水町にやってきました。
何をマナブんでしょうか?
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
2020年は球磨川(熊本県)で大きな水害がありました。鹿児島にも大きな川・川内川が流れています。こういう大きな川での水害について、学んでみたいと思います。
一級河川・川内川(せんだいがわ)
熊本、宮崎、そして県内では湧水町、伊佐市、さつま町、薩摩川内市を流れる全長137kmの大河です。
大きな川なので、県や市町村ではなく国が管理をしています。
2006年 県北部豪雨災害
湧水町吉松地区を歩いてみると…
●気象予報士・渡司陵太
ここに洪水を示す看板がありますね。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
平成18年(2006年)7月、梅雨の豪雨なんですけど…
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
一級河川・川内川のまわりでたくさん雨が降って、その時に「このレベルまで水につかった」という印なんです。
2006年の県北部豪雨災害
梅雨の大雨で川内川やその支流が氾濫し、死者5人、およそ2300戸が浸水する被害が出ました。
洪水の看板は伊佐市にも…
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
このあたりは私たちが立っている路面から1.4mですね。下の田んぼから3mくらいの高さの水が来たことになります。
●気象予報士・渡司陵太
3mくらい…
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
大変な量ですよね。
過去の水害を伝える仏像
川内川は過去に何度も水害を起こしてきました。
過去の災害を伝える仏像が、さつま町の神社に祭られていました。
薬師如来像です。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
この仏像はここから川内川を約20kmさかのぼった旧菱刈町・湯之尾地区(伊佐市)から流されてきた仏像なんです。江戸時代に3回流されているんです。
もともと、伊佐市湯之尾地区にあった薬師如来像。
洪水でさつま町まで流された後、もとの伊佐市に返還されましたが…(1回目)
また洪水でさつま町へ。
伊佐市に再び返されましたが…(2回目)
さらに起きた洪水でまたさつま町へ。(3回目)
あわせて3回も流され、そのまま祭られることになったそうです。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
川内川はたびたび洪水を起こしてきて、仏像が流されてくるわけですから、周辺に洪水の影響を与えていたはずです。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
仏像は川内川では洪水があることを今に伝えてくれる生き証人だと思います。
洪水が起きやすい地形
過去に繰り返されてきた洪水
川内川には洪水の被害を大きくしやすい地形があると井村准教授は指摘します。
湧水町の川幅が急に狭くなる場所にやってきました。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
ここは上流に加久藤盆地(宮崎県えびの市・鹿児島県旧吉松町)があるんですけど、それがこのあたりで狭くなって、伊佐盆地に流れていく場所になります。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
今年、球磨川(熊本県)で水害がありましたけど、よく似た地形をしているんです。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
川内川の水害(2006年)のあと10年ほどかけて、川幅を広くして堰(せき)を低くする工事が行われたんです。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
川幅を広げていますけど、流れそのものはそんなに速くなっていないんです。もともとの川の傾斜がほとんど無いんです。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
川幅を広げても、水が流れない状況というのは変わっていなくて、2006年に水害があった所はリスクが残り続けていると考えた方がいいと思います。
大規模工事も残るリスク
2006年の洪水のあと、国はおよそ375億円をかけて川の幅を広げたり、山を掘削して洪水の水が流れる通り道を作ったり、洪水対策を行いました。
しかし、工事がすべて終わった今も最新のハザードマップには洪水の危険性を示す色が塗られています。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
水害のリスクがある所は残ったままです。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
洪水対策は被害を軽減したり、被害が発生するのを遅らせたりする効果はあるんですけど、完全に水害を食い止める所まではいきません。
●鹿児島大学・井村隆介 准教授
大きな河川のそばにすんでいる方は大雨・避難の情報が出たら、あるいは自分で情報を取りにいって、できるだけ早い段階での避難が必要になると思います。
(2020年12月8日 放送)