音のない世界へ デフリンピック選手が教える“手話”の魅力と課題
2025年11月22日(土) 06:45

手話に触れてみてほしい
耳の聞こえない人、聞こえにくい人の国際競技大会、デフリンピックの東京開催にちなみ、手話について考えてみた。同大会日本代表の鹿児島国際大学3年・島倉杏奈さんの日常から見えてくる手話の世界を通して、私たちが知らなかった「音のない世界」への扉を開いてみよう。
学生生活での手話コミュニケーション

島倉杏奈さん(左)と東垂水優陽さん(右)
島倉さんは、デフリンピックの男女混合リレーで日本のアンカーを務め、チームは日本記録を更新した。生まれつき耳が聞こえない島倉さん、昼休みの様子は、一見普通の大学生と変わらない。友人の東垂水優陽さんと、彼氏の話で盛り上がっていた。
「私は杏奈ちゃんに彼氏がいることは知ってたよ。LINEのホーム画面、彼氏じゃない?」と東垂水さんが尋ねると、島倉さんは「そうです」と返す。「彼氏は県外?」という質問に「遠いんだよね。寒いところと暑いところだから全然違うんだよね」と答えた。
実はこのやりとり、すべて手話で行われていた。東垂水さんは島倉さんとの出会いがきっかけで手話の勉強を始めた。「私が手話を勉強していることを杏奈ちゃんはどう思う?」と尋ねると、島倉さんは「とってもうれしい」と返答。「スマホとかを使わずに話せることがうれしい」と、手話でのコミュニケーションに喜びを感じているという。
音声認識アプリ活用も課題が
昼食後、島倉さんは午後の授業へ向かう。スマートフォンの音声認識アプリを使って授業を受けているが、漢字の変換がうまくいかないことも。この日も「(シラスの)堆積」という内容の講義で「退席」と誤って表示される場面があった。
島倉さんは「授業の時に手話通訳が入っているといいなと思う。楽に授業を受けられるのではないか」と話す。「みんなが話していることが分からなくても『まあいいか』と。寂しさはあったけど、だんだん慣れてきたらその気持ちもなくなる」と、現状に適応しながらも改善を望んでいる。
長い学習期間と低い合格率 手話通訳の現状と課題

手話通訳者の養成講座(鹿児島市)
手話通訳者になるためのハードルは高い。一般的に5年の学習期間が必要とされ、鹿児島県内の過去5年の合格率の平均は10%未満だという。さらに、県が認定する手話通訳者と国が認定する手話通訳士の資格を持つ人は県内に合わせて105人いるが、そのうち半数は60代以上と高齢化も進んでいる。
県手話通訳問題研究会の横溝和恵会長は「手話通訳の雇用の場もないし、多いのは派遣だが、派遣もボランティアの範疇。これから5年後10年後を考えた時に、このままの状況を引きずっているようでは本当に通訳者がいなくなる」と深刻な課題を指摘する。


















































































































