「本当に命を描いている気持ちになる」 父との別れを乗り越え自分の内側にある世界を描く 鹿児島の画家が語る創作の原点
2025年11月20日(木) 16:40

「BREAK DAY ミマとモリーのいちにち」(絵・文 コダマリ)
鹿児島市で活動している画家が「ミマとモリーのいちにち」という絵本を手がけた。優しい物語の背景にあったのは父との別れという深い体験。そこをたどると、彼女が描こうとする「命」の意味が見えてきた。
線の一本一本に命を吹き込む

鹿児島市出身の画家・コダマリさん
「絵を描き始めたのは覚えている限りだと保育園から」と語るコダマリさんは鹿児島市出身。
地元の赤塚学園タラデザイン専門学校を卒業後、フリーランスのデザイナー、イラストレーターとして活動してきた彼女が画家として本格的に制作を始めたのは5年前。
出産をきっかけに、自分の内側にある世界を子どもたちに見せたいと思ったという。

原点となる作品「世界」
コダマリさんの作品は「ミリペン」と呼ばれる先端が細くとがったペンと水彩絵の具で描かれている。
彼女の原点となる作品には、まるで壁画のように2人の子どもが渦を巻く姿が描かれているが、それは「愛」と「真実」を表現したものだという。
「私が読み解いた限りでは、子供が世界をつくっているんじゃないかと思って。子供がきれいになるには世界がきれいになってから生まれて循環していく世界なのでは」と彼女は説明する。
“パリン”と割れた花瓶 その音に秘められたストーリー

物語の舞台は鹿児島県日置市美山 薩摩焼の産地として知られる
そんなコダマリさんが2024年に初めて発表した絵本が「BREAK DAY ミマとモリーのいちにち」。「第27回文芸社えほん大賞」で2300を超える応募の中から2位の優秀賞に選ばれた。森の中で“パリン”という音とともに大切な花瓶を割ってしまった女の子ミマが、鹿のモリーと一緒に割れた器を直す旅に出るというストーリーだ。
物語の舞台は、薩摩焼の窯元が多くある鹿児島県日置市美山。登場する花瓶は薩摩焼だ。一見優しい童話に見えるこの絵本だが、その創作の原点には深い個人的な体験があった。

“パリン”と割れた花瓶 父の死を経験したコダマリさんの心を象徴
「頭の中の構想。ミマちゃんという女の子が父の死から立ち上がるところから始まった」とコダマリさんは明かす。
15歳の頃、彼女は母親から「お父さんが亡くなったらしいよ」と告げられた。「その時は『ふーん』と思っていたが、だんだん『私のお父さんもういないんだ』みたいな気持ちがあって。お父さんというものを初めて実感したというか」
“パリン”と割れた花瓶は、父の死で壊れた彼女自身の心を象徴していた。


















































































































