「希少がんに光」鹿児島発・改変アデノウイルス治療、最終治験へ 日本初の承認へ前進か
2026年2月23日(月) 10:00

鹿児島大学発ベンチャーの挑戦:風邪ウイルスを改変して“がんだけを狙う”新薬、2025年最終治験に突入
風邪の原因として知られるアデノウイルスを遺伝子改変し、がん細胞だけを狙い撃ちする治療薬――。世界でも類例の少ないウイルス療法の研究が鹿児島で実を結ぼうとしている。鹿児島大学発のベンチャー企業が開発を進める治療薬は、2025年11月に最終段階の治験に突入し、早ければ2027年にも国への承認申請が見込まれている。
研修医時代の挫折が生んだ新たな挑戦

「患者を救いたい」研修医の思いが実を結ぶ
鹿児島市にある鹿児島大学桜ヶ丘キャンパスの一角にある研究室で、遺伝子治療と再生医療の研究に取り組む小戝健一郎教授。10年以上にわたって続けてきたのが、ウイルスを使ってがん細胞だけを破壊する治療薬の開発である。
「最初、小児科で2年間研修して結構ショックだったことが、患者が治らない、特に小児のお子様が治らないことが結構つらくて、小さくてもいいから患者を救いたいという思いがあった」
研修医時代の苦い経験が、小戝教授を遺伝子治療の道へと向かわせた。2006年にアメリカでの研究を経て鹿児島大学に赴任してからも研究を継続し、2015年にその成果を発表した。
がん細胞だけに反応する「賢いウイルス」

がん細胞だけを壊す「賢いウイルス」治療薬、最終ステージに到達
開発されたのは腫瘍を溶かすウイルス「Surv.m-CRA-1」。ベースとなったのは風邪のウイルスとして知られるアデノウイルス。変異の危険性が少なく遺伝子を作り替えやすいという特性を活用し、小戝教授が独自に改変した。
最大の特徴は、がん細胞だけが出すタンパク質「サバイビン」に反応して増殖する仕組みにある。ウイルスの増殖に伴い、細胞を壊すタンパク質も増加し、がん細胞だけを選択的に破壊する。
「がん細胞に感染した時だけスイッチが入り、ウイルスが動き出してがん細胞を破壊。ウイルスを作り替えていて自然界にないウイルスなので、正常の細胞、体に感染してもウイルスにブレーキがかかり、非常に安全」と小戝教授は説明する。
希少がんに光明、治験で高い効果を確認

医療の最前線が鹿児島に
日本人の2人から3人に1人が患い、年間38万人が命を落とすがん。その中でも人口10万人あたり数人しか発症しない「希少がん」は、採算性の問題から治療法が確立されていないことが多い。
2016年から始まった治験では、骨に発生する希少がん「原発性悪性骨腫瘍」の患者を対象に、注射による局所投与で治療薬の効果を検証している。従来の抗がん剤が全身投与だったのに対し、副反応も発熱などの軽度なものにとどまっている。
治験第1段階では、投与した患者9人のうち6人でがんが小さくなったという結果が確認された。第2段階でも安全性や有効性を示唆する結果が得られ、2025年11月についに最終ステージへと進んだ。
世界2例目、日本初のウイルス治療薬を目指して
仮に本承認されれば、がん治療のためのウイルス治療薬としては日本初、世界でも2例目という画期的な事例となる。
「新しい技術を開発するということは、鹿児島をはじめ、日本、世界の患者を救うという社会的な意義もありますが、それに加えて地方の産業の創出、健康を救うということと、新しい産業や地域の雇用を生み出すことに貢献できれば」
小戝教授の視線は、患者を救うことにとどまらず、鹿児島から世界へ発信する新産業の創出にも向けられている。治療薬を使えるがんの種類の拡大も視野に入れながら、研究室での挑戦は今日も続いている。



















































































































