廃校が蒸留所に生まれ変わる 「焼酎の伝統」を守る若き挑戦者たち
2025年12月12日(金) 12:00
親から子へ 100年以上受け継がれる木樽の技

木樽蒸留器(白金酒造)
伝統の焼酎造りを支える鹿児島独自の技術がある。姶良市の旧国道10号沿いにある白金酒造の石蔵を訪ねた。中には、真新しい木製の蒸留器が。川田庸平社長は「全て手作りで作っている蒸留器です。金属を一切使わずに鹿児島県産の杉の木を竹の輪っかで締めているだけ」と説明する。
ステンレス製の蒸留器が主流となる中、白金酒造では一部の銘柄で木樽の蒸留器を使った焼酎造りを長年続けている。「焼酎が非常に軟らかくなる。素材である杉の木の香りが、一部焼酎の方に移って個性的な焼酎になる」と川田社長は語る。
木樽蒸留器は現在、県内でも10軒ほどの酒蔵でしか使われていない。作っているのは曽於市大隅町の小さな工房。今や木樽蒸留器を一から作れるのはここの職人、津留安郎さん(63)ただ一人だ。
蒸留器の材料は樹齢80年以上の杉の木と竹のみ。設計図はない。釘も使わずすべて手作業で仕上げるため完成まで約3か月かかる。
津留さんの父・辰矢さんは木樽職人だった。安郎さんは元々県内で会社員をしていたが「父親の技を絶やしてはいけない」との思いが強まり2009年、46歳の時に後を継ぐ決心をした。「親父から一言も怒られた覚えがない。褒めるのが上手。多分、叱られてたら今(木だる作りを)やっていなかった」と安郎さんは振り返る。
2014年に亡くなった辰矢さんの技を継ぎ国内唯一の木樽蒸留器の職人として工房に立つ安郎さん。「『辰矢さんの時は良かったよね』と言われたくない。言われないように親父に近づかないと」と気を引き締めた。
手の温もりが残る伝統の技。その一つ一つが、鹿児島焼酎の味を、静かに支えている。「鹿児島の焼酎はもっともっと元気になってほしい」と安郎さんは願う。
未来へ紡がれる鹿児島焼酎それぞれの物語

「世界から来てもらえる蔵に」廃校蒸留所が描く“来訪型”地域づくり
中学校跡地に新たな酒蔵をオープンさせた八木さんは、敷地の裏手に広がる畑を芋畑にしていきたいと語る。目指すのは芋の生産から焼酎の製造まで一貫して行う、フランスのワイナリーのような場所だ。
八木さんは「ワインの愛好家やいろんなお酒を飲む人たちが、私が世界に行くのではなくて、世界からこっち(牛ノ根蒸留所)に来てくれるような『なんか面白い所あるよ』とか、そのような蔵にできればいいと思う」と夢を語る。
未来へ挑む若い造り手がいる。そして、伝統の技を守る職人がいる。鹿児島焼酎のそれぞれの物語は、これからも静かに、確かに紡がれていく。

















































































































