廃校が蒸留所に生まれ変わる 「焼酎の伝統」を守る若き挑戦者たち
2025年12月12日(金) 12:00

「ユネスコ登録1年」伝統と革新が交差する鹿児島の焼酎物語
日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されて1年。令和の米騒動による原料高騰や消費量の減少に直面しながらも、焼酎王国・鹿児島には伝統を守りながら新たな挑戦を続ける人々がいる。
廃校に息を吹き込む新たな挑戦

7年ぶりの新酒蔵誕生。元中学校が「牛ノ根蒸留所」へ
桜島を望む鹿児島県垂水市二川。15年前に閉校した牛根中学校跡地に、2025年、「牛ノ根蒸留所」が開業した。鹿児島県内に7年ぶりに誕生した新しい焼酎蔵で、かつての広い体育館が仕込み場と蒸留所に生まれ変わった。
代表の八木健太郎さんは、経営する会社「健土」でサツマイモ栽培などを手がけてきた。県内の酒蔵で杜氏をしていた経験を生かし、新たな挑戦に踏み出した。
八木さんは「この辺りは限界集落で、高齢者しかいなくて空き家率も50%を超えている」と説明する。「その中で働いて大丈夫なの?」と言われるそうだが「地域の方がすごく応援してくれて『来てくれてありがとう』と。母校出身の方もパートも入っている。みんな喜んでくれて『ありがとう』と言ってくれる」とその歓迎ぶりを話す。
2025年10月に単式蒸留焼酎製造免許を取得し、洗練された甘みと味わいの余韻が続く焼酎を目指した。出来上がったファーストボトルは社名と同じ「健土」と名付けられた。本数が限られるため値段は高めだが、売れ行きは好調だという。2026年1月には価格を抑えた銘柄の発売も控えている。
八木さんは「みずみずしさがあって、きれいな酒質なものを造りたい」と意気込みを語る。
厳しさを増す鹿児島焼酎の現状

ユネスコ登録1年、焼酎の未来は?
県内で110番目の酒蔵としてスタートを切った「牛ノ根蒸留所」。一方で、鹿児島焼酎を取り巻く環境は厳しさを増している。県酒造組合によると、県産の焼酎生産量は、一連のコメ不足による原料高騰などの影響で4年ぶりに減少した。また、健康志向の高まりや好みの多様化により、出荷量は2013年から12年連続で前年実績を下回っている。
そうした中、2025年に届いた明るいニュースが、焼酎を含む日本の「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録だった。各地の風土に応じて築き上げられた独自の技術が高く評価された。

















































































































