ストーリー 

 異様な風体の男は取り憑かれたように一心不乱に歩いていく。男の名は前田正名、43歳。
元農商務省の役人、名も無き薩摩藩士だった。全国を行脚し、その地方にあった産業を興そうと奮闘していた。
誰も振り向かない、でも決して諦めることはなかった…
“あの人との約束があったから。”
懐には大切な短刀…男は誓い、また歩き始めた。

 時は遡る。正名16歳、下級の薩摩藩士。長い刀を地面につけながら、先輩藩士をひたすら追いかけた。
“薩長同盟が破談の危機にある―”
密談を秘かに聞いていた正名、ここで運命の出会いを果たすことになる。
あの坂本龍馬との出会いだ。龍馬は正名に同盟存続のための重要な役目を任せ、こう語った。
「自分の夢は未開の蝦夷へ行って加工品を作り、それを海外へ売る。地方からこの国を豊かにする。ニッポンには、新しい時代が来る」
時は新時代、明治へ。フランスに留学し帰国した正名は農商務省の役人として、新たな国作りへ奔走した。
「地方に産業を興し、この国を豊かにしたい」
しかし、日本は空前の大不況、特に地方の農村の荒廃は酷かった。農業で豊かなフランスを見た正名は憤る。
“一体、何のための維新だったのか”
上役に進言した正名、まもなく職を追われた。

正名は全国行脚の旅に出た。たった一人の闘い…思うようにいかない。
妻のイチ、大久保利通の姪、夫のいない家族に思いがけない事態が待っていた。数々の困難に直面しながらも一歩一歩、前へ進む。
情熱は途絶えることはない。
“地方からニッポンを変える”
龍馬から託された男、熱く駆け抜けたその人生、時代のバトンは150年後の今、受け継がれる。


トップに戻る