県本土から西へ約５０キロ離れた下甑島。ここに全国から注目を集める医師がいる。離島医療に携わり、テレビドラマ化された人気漫画『Ｄｒ．コトー診療所』のモデルとなった医師、瀬戸上健二郎先生（７６）だ。島にやってきて３９年。その先生がこの春、一つの決断をした。島民とともに歩んだ３９年、本物の『Ｄｒ．コトー』、その万感の思いに迫りました。

離島医療３９年！Ｄｒ．コトー瀬戸上先生の決断

【瀬戸上健二郎先生】
県本土から西へおよそ５０キロ離れた下甑島。ここに島民の命を守ってきた下甑手打診療所があります。ここで３９年間、医師として東奔西走してきたのが瀬戸上健二郎先生です。
　
東串良町出身の瀬戸上先生。高校生の時、大病を患い、手術で助けてもらったことを機に医師の道を志しました。鹿児島大学医学部で学び、その後、国立病院の外科医長まで務めた瀬戸上先生。開業のため病院をやめたとき、下甑村から依頼がありました。「開業までの半年だけでもきてほしい」と…

半年の約束で、３７歳の時に島にやってきた瀬戸上先生。当時、島の診療所は錆れていました。満足な設備は何一つありません。手術が出来るよう整えても島の人からはこんなところで手術するぐらいなら死んだほうがましと言われたこともありました。

しかし、一歩一歩。“熱が出た”と聞いては往診に向かい、腰が痛いと聞いては住民を喜ばせようと中国針の勉強をして治したこともありました。診療の範囲は内科から産婦人科に外科まで、、、全てをカバー。たった一人で島民の命を守り続けました。次第に島の人たちは信頼を寄せるようになり、設備も充実。手術も人工透析も島でできるようになりました。

そして、離島医療に全力で注ぐその姿は関係者の注目を集め、瀬戸上先生をモデルにした漫画・ドラマ『Ｄｒ．コトー診療所』が誕生しました。

　
【春の決断】
半年の約束は１年、５年、１０年と延びていき、気がつけば３９年の年月が過ぎていました。７６歳で朝も夜も無く、２４時間。たった一人で島民の命を守るプレッシャー。
それは心も体もすり減る日々です。先生はこの春決断しました。「よし、このあたりが引き際だ。島を去ろう」と…

　
【お別れの会】
島を離れる先生の決断に島の人たちは「お別れの会」を計画しました。２５０人の島民が集う会場には、先生を慕う優しい時間が流れました。先生の門出を島民総出で祝いました。広がるのは感謝の笑顔でした。

診療所の看護師全員で披露した踊りにはなんと 先生も飛び入り参加。そして、会はクライマックスへ、、、瀬戸上先生が語り始めました。島にやって来て３９年。色んな思い出がよぎります。｢島の人たちがいたから、やって来れた。悔いなしです」と…
最後は先生が島民、一人一人と別れの握手。感謝の笑顔は感謝の涙に、、、
“先生、有難う”
半年のつもりが３９年、島の人たちのために走り続けた瀬戸上先生の歩み。それは紛れもなく、『Ｄｒ．コトー』そのものでした。

　
【最後に聞いてみました】
３９年を噛みしめるように向かう診療所。いつものようにわら草履を履く瀬戸上先生。
「離島医療というのは面白いと思います。何でもありなんだよね。だから面白い。だけど厳しい、それだけね。自分の専門外のこともいっぱい飛び込んでくるから。その厳しさをどう切り抜けていくか。そこに面白さがあると思いますよ。いろんな分かれ道というか岐路があるんだけど、来て良かったですよ。我が離島医療人生に悔い無しです。ちょっと大げさかな(笑)」
Dr.コトー、瀬戸上健二郎、、、。紡いだ数々の物語を胸に、この春　甑島を後にしました。