絹織物の最高傑作とも言われる鹿児島の伝統的工芸品「本場大島紬」 。
若い人たちに魅力を伝えたいと、大島紬専門店が始めた取り組みを取材しました 。
鹿児島の伝統的工芸品「本場大島紬」
鹿児島の伝統的工芸品、「本場大島紬」。
約1300年の歴史をもつ絹織物です。
大島紬の振袖は、作られてはいますが数が少なく、 あまり市場には出回っていません。
大島紬そのものが「普段着」という位置づけになっているため、一般的には成人式などフォーマルな場ではほとんど着用されないというのが主な理由です。
未来を見据えて★大島紬の振袖レンタル
そんな中、未来を見据えて鹿児島市の大島紬の織元、大瀬商店さんが新たに「大島紬の振袖レンタル」を始めました。
三代目の大瀬輝也さんです。
大瀬さんは、「大島紬のある暮らし」をテーマに反物や着物はもちろん、生活に取り入れやすい「小物類」にも力を入れています。
お店には約150種類の大島紬がおいてあります。
代表的な泥染めをはじめ、明るい色合いの白大島や、ピンク・青・赤など、カラフルな大島紬もあります。
今回始めた取り組みでは、この中から好きなものを選び、自分の背丈に合った振袖を作ってもらえるんです。
基本はレンタルですが、気に入ったら購入することもできます。
大島紬の振袖レンタルを後押し★大瀬商店の強み
通常、着物は「1反」の布で作ります。
しかし、振袖は袖が長いので「1.5反」必要になります。
2反使って作ると、余りが出てしまうことに。
しかし大瀬商店は、もともと大島紬の端材を使い、 小物作りに力を入れてきました。
「余りの布がでても効率よく活用できる」という大瀬商店ならではの強みが、 新たな挑戦の後押しにもなりました。
新しいマーケット★大島紬の振袖の持つ可能性
ところで、世界三大織物の一つと言われている「大島紬」は、
図案制作、糸の染め、織りなど、 約30の工程を経て作られます。
鹿児島が誇る伝統的工芸品ですが、 今や、生産量はピーク時の約1.6パーセントにまで減少しています。
着物離れや職人の後継者不足などが影響していると言われています。
そんな中でも大瀬さんは、軽くて着心地の良い大島紬の振袖に、新たな可能性を見出しています。
成人の日★思い出のある「大島紬」で迎えたい
先月上旬。お店に一組の家族が訪れました。
永田心花さん(19歳)です。
付き添いで来たのは、祖母の恵美子さんです。
この取り組みを多くの人に知ってほしいと、大瀬商店はモデルを募集しました。
そこで選ばれたのが、徳之島出身の心花さんでした。
心花さんは、大島紬に人一倍強い思いを抱いていました。
初めて大島紬を着たのは小学3年生のとき。
島唄の全国大会出場をきっかけに、祖母がプレゼントしてくれたものでした。
思い出のある「大島紬」で成人の日を迎えたい。
心花さん、たっての希望でした。
気になった反物を着物風に着付けてもらい、イメージを確認していきます。
約2時間の試着タイムを経て心花さんが選んだのは、泥染めの大島紬でした。
「品のある大人の女性」というイメージにぴったりだったそう。
オーダーを受け、いよいよ振袖作りが始まりました。
仕立てを担当するのは、和裁士の佐藤紀美子さんです。
華やかになるよう心花さんが選んだ2種類の大島紬で、市松模様の振袖を作ることにしました。
その作り方が、実はかなり特殊。
何回もはさみを入れ、パッチワークのように縫いあわせなければなりません。
この道30年の佐藤さんも、ちょっと苦戦したようです。
6月中旬。
心花さんが再びお店を訪れました。
完成した振袖を着て成人式の前撮りをするためです。
よりかわいく仕上げる為に使われているのは、ドット柄に見える紫の大島紬。
その幅はなんと5ミリ。職人技が光ります。
撮影場所は鹿児島市の異人館です。
高級感あふれる大島紬がレトロな雰囲気にとけこみ、まさに写真映えです!!
大島紬の振袖レンタル 13万2000円(税込)~
★レンタル内容(振り袖・帯・長じゅばん・帯揚げ・帯締め・草履・バッグ・着付け用小物一式)※前撮りや、成人の日当日の着付け、ヘアセットなども含まれている。
大島紬振り袖レンタル試着会
場所 鹿児島市荒田1-27-16「PONGEE」
日時 6月24日(金)~26日(日)
電話 099-299-1800