馬毛島着工から2年 宿泊施設の不足、観光客の減少、漁業制限 住民の思いとは? 鹿児島・西之表市
2025年1月29日(水) 13:20
特集、今、鹿児島で。
1月26日告示された、鹿児島県の西之表市長選挙でも大きな争点となっている馬毛島についてです。
アメリカ軍の訓練移転や自衛隊施設の整備のための工事が始まってから、1月で2年となりました。
進んでいく国防計画により、西之表の街も変化を続ける中、住民がそれぞれの立場で見つめたこの2年間を取材しました。
先週撮影した西之表市の馬毛島。
アメリカ軍の訓練移転や自衛隊施設の整備のための工事が始まってから、2年が経過しました。
安楽遥記者
「島の至るところでトラックが土を巻き上げながら移動している様子が確認できます」
着工から1カ月の際に撮影した映像と比べると大きく様変わりしています。
工事は着実に進められていますが、人員不足などの要因で計画には大幅な遅れが。
本来なら着工から2年でこのような滑走路が完成している予定でしたが、まだ予定地は舗装が進んでおらず地面は茶色いままでした。
防衛省はおおむね4年としていた工期を、3年間延長すると発表しています。
安楽遥記者
「島に建てられた仮設のプレハブ小屋が数多く立ち並んでいて、この2年間で工事関係者が増えたことを感じさせます」
2024年12月時点で、馬毛島を含む西之表市には4500人を超える工事関係者が滞在。
工事関係者の増加は、思わぬ変化を街にもたらしているようです。
ダイビングショップを営む林哲郎さんです。
種子島Sea-Mail・林哲郎さん
「客が泊まるところがないというのが、2年前からすると厳しくなってきた」
実はKTSでは、工事開始から1カ月後の2023年2月、林さんを取材していました。
種子島Sea-Mail・林哲郎さん
「『泊まるところがない』『手配してもらえませんか』という問い合わせがほとんど」
2年前にも指摘していた宿泊施設の不足。
林さんはダイビング客向けに簡易の宿泊施設を建てました。
しかし、この2年間、ダイビングの予約はほとんどなく、コロナ禍でも60人ほどいたゴールデンウィークの客は2024年はわずか3人だったそうです。
林哲郎さん
「(2年間で)格差が出てきた。馬毛島関連の仕事をしている人は工事が始まる前の3倍4倍増。我々観光関係は宿泊施設やレンタカーがないことで激変」
2年前は計画に賛成していた林さん。
少しずつ心境に変化が出てきたと言います。
林哲郎さん
「『島の経済などが浮上するようであれば』という思いだった。ところが、だんだんその思いが薄らいできた。『2年前と僕の思いは変わりません』と言ったら絶対嘘になる」
続いて話を聞いたのは、宿泊施設を経営する荒木政臣さんです。
2023年2月には、既に客層の変化を口にしていました。
種子島あらきホテル・荒木政臣さん
「主な客層としては工事関係者が多い」
当時と変わらず、現在も工事関係者の宿泊が多く、ほぼ満室状態が続いているといいます。
荒木政臣さん
「こちらはキャビンフロアといって24床あるが、元々この中は宴会場だった」
この2年間で宴会場の改築を行ったり、部屋割りを変更したりして、着工前より40部屋以上増やしたそうです。
自身の施設は活況を呈する一方で、荒木さんも観光客が減ってしまったことを懸念しています。
荒木政臣さん
「人の出入りは多くなったものの、街のにぎわいとしては想定通りではない。地域で一緒に団結をして観光を盛り上げていかなければ、このまま忘れ去られてしまってはいけない」
国道沿いで民宿とすし店を営むこちらの店。
民宿 直寿司・瀬下直孝さん
「とにかく人が増えた。ちょっと買い物行くにも車ばっかり通っている」
この2年間で人や車が増えたと語る瀬下直孝さん。
2023年7月に取材した際、すし店は休業していました。
基地工事により、馬毛島周辺の漁が制限され、地魚が入荷できなくなったためです。
2年たった今もショーケースは空のまま。
Q.すし店は2年間やっていない?
瀬下直孝さん
「やっていません。魚が揚がらないし、高いし。だから冷凍のマグロとかをよそからとった方がいいんだけど運賃がかかる。厳しいんですよ」
一方で、民宿は工事関係者で6割ほどが埋まっていると言いますが。
瀬下直孝さん
「今後どうなるかなと思うと不安。今までは助かったけど、いなくなってからどうなるかなと」
馬毛島着工から2年。
そんな中、西之表市では市政のかじ取り役を決める市長選で、6人が論戦を交わしています。
それぞれの計画への賛否は様々ですが、次の市長の任期中にはアメリカ軍による離着陸訓練も始まる可能性があります。
想定を超えて変化する街にどんなリーダーを必要としているのでしょうか。
瀬下直孝さん
「どちらかというと賛成派だから(計画を)突き進めてもらいたい。農業も漁業もみんなが潤ったらいい」
荒木政臣さん
「島の観光の総合力という面では、幅広い産業に対してしっかり下支えをしていかないといけない。そのためには行政がバックアップをしていくことを忘れないようにしないといけない」
林哲郎さん
「我々の世代で恩恵を受けている人も、自分たちの世代はいいかもしれないが、子ども・孫の代になった時に、工事も終わっているから、その時に何が残るか。それを考えて国と交渉するような強力な首長が欲しい」
夜になると西之表市の沖合で明るく光る馬毛島。
現在24時間体制で工事が進められています。
街を揺るがす国家プロジェクトにどう向き合うのか。
工事が終わった後に残るものは何か。
それぞれが考え続ける必要があります。
1月26日告示された、鹿児島県の西之表市長選挙でも大きな争点となっている馬毛島についてです。
アメリカ軍の訓練移転や自衛隊施設の整備のための工事が始まってから、1月で2年となりました。
進んでいく国防計画により、西之表の街も変化を続ける中、住民がそれぞれの立場で見つめたこの2年間を取材しました。
先週撮影した西之表市の馬毛島。
アメリカ軍の訓練移転や自衛隊施設の整備のための工事が始まってから、2年が経過しました。
安楽遥記者
「島の至るところでトラックが土を巻き上げながら移動している様子が確認できます」
着工から1カ月の際に撮影した映像と比べると大きく様変わりしています。
工事は着実に進められていますが、人員不足などの要因で計画には大幅な遅れが。
本来なら着工から2年でこのような滑走路が完成している予定でしたが、まだ予定地は舗装が進んでおらず地面は茶色いままでした。
防衛省はおおむね4年としていた工期を、3年間延長すると発表しています。
安楽遥記者
「島に建てられた仮設のプレハブ小屋が数多く立ち並んでいて、この2年間で工事関係者が増えたことを感じさせます」
2024年12月時点で、馬毛島を含む西之表市には4500人を超える工事関係者が滞在。
工事関係者の増加は、思わぬ変化を街にもたらしているようです。
ダイビングショップを営む林哲郎さんです。
種子島Sea-Mail・林哲郎さん
「客が泊まるところがないというのが、2年前からすると厳しくなってきた」
実はKTSでは、工事開始から1カ月後の2023年2月、林さんを取材していました。
種子島Sea-Mail・林哲郎さん
「『泊まるところがない』『手配してもらえませんか』という問い合わせがほとんど」
2年前にも指摘していた宿泊施設の不足。
林さんはダイビング客向けに簡易の宿泊施設を建てました。
しかし、この2年間、ダイビングの予約はほとんどなく、コロナ禍でも60人ほどいたゴールデンウィークの客は2024年はわずか3人だったそうです。
林哲郎さん
「(2年間で)格差が出てきた。馬毛島関連の仕事をしている人は工事が始まる前の3倍4倍増。我々観光関係は宿泊施設やレンタカーがないことで激変」
2年前は計画に賛成していた林さん。
少しずつ心境に変化が出てきたと言います。
林哲郎さん
「『島の経済などが浮上するようであれば』という思いだった。ところが、だんだんその思いが薄らいできた。『2年前と僕の思いは変わりません』と言ったら絶対嘘になる」
続いて話を聞いたのは、宿泊施設を経営する荒木政臣さんです。
2023年2月には、既に客層の変化を口にしていました。
種子島あらきホテル・荒木政臣さん
「主な客層としては工事関係者が多い」
当時と変わらず、現在も工事関係者の宿泊が多く、ほぼ満室状態が続いているといいます。
荒木政臣さん
「こちらはキャビンフロアといって24床あるが、元々この中は宴会場だった」
この2年間で宴会場の改築を行ったり、部屋割りを変更したりして、着工前より40部屋以上増やしたそうです。
自身の施設は活況を呈する一方で、荒木さんも観光客が減ってしまったことを懸念しています。
荒木政臣さん
「人の出入りは多くなったものの、街のにぎわいとしては想定通りではない。地域で一緒に団結をして観光を盛り上げていかなければ、このまま忘れ去られてしまってはいけない」
国道沿いで民宿とすし店を営むこちらの店。
民宿 直寿司・瀬下直孝さん
「とにかく人が増えた。ちょっと買い物行くにも車ばっかり通っている」
この2年間で人や車が増えたと語る瀬下直孝さん。
2023年7月に取材した際、すし店は休業していました。
基地工事により、馬毛島周辺の漁が制限され、地魚が入荷できなくなったためです。
2年たった今もショーケースは空のまま。
Q.すし店は2年間やっていない?
瀬下直孝さん
「やっていません。魚が揚がらないし、高いし。だから冷凍のマグロとかをよそからとった方がいいんだけど運賃がかかる。厳しいんですよ」
一方で、民宿は工事関係者で6割ほどが埋まっていると言いますが。
瀬下直孝さん
「今後どうなるかなと思うと不安。今までは助かったけど、いなくなってからどうなるかなと」
馬毛島着工から2年。
そんな中、西之表市では市政のかじ取り役を決める市長選で、6人が論戦を交わしています。
それぞれの計画への賛否は様々ですが、次の市長の任期中にはアメリカ軍による離着陸訓練も始まる可能性があります。
想定を超えて変化する街にどんなリーダーを必要としているのでしょうか。
瀬下直孝さん
「どちらかというと賛成派だから(計画を)突き進めてもらいたい。農業も漁業もみんなが潤ったらいい」
荒木政臣さん
「島の観光の総合力という面では、幅広い産業に対してしっかり下支えをしていかないといけない。そのためには行政がバックアップをしていくことを忘れないようにしないといけない」
林哲郎さん
「我々の世代で恩恵を受けている人も、自分たちの世代はいいかもしれないが、子ども・孫の代になった時に、工事も終わっているから、その時に何が残るか。それを考えて国と交渉するような強力な首長が欲しい」
夜になると西之表市の沖合で明るく光る馬毛島。
現在24時間体制で工事が進められています。
街を揺るがす国家プロジェクトにどう向き合うのか。
工事が終わった後に残るものは何か。
それぞれが考え続ける必要があります。