人手不足の建設業はどう対応?ICT化の推進や外国人材の活用も 鹿児島の現場を取材
2024年9月26日(木) 15:45
人口減少が進む中、様々な業界で人手不足が深刻になっています。
2024年5月、厚生労働省は各業界の労働者の過不足状況を調査しました。
調査では「人手不足」と回答した割合から「過剰」と回答した割合を引いた「人手不足感」が算出されています。
たとえば専門・技術サービス業では「人手不足」58%に対し「過剰」1%で57、運輸業・郵便業ではその数値が55となっています。
中でも「人手不足」60%に対し「過剰」1%で「人手不足感」60となっているのが、建設業です。
深刻な人手不足にあえぐ中、建設業界では人手不足にどう対応しているのか。各現場の取り組みを追いました。
鹿児島県霧島市の工事現場。山を切り崩し、新たな道路を造っています。
現場で使われているバックホーと呼ばれる重機には最新の技術が搭載されています。作業員がディスプレイの表示画面について説明してくれました。
「掘削する面がこのピンクの線。バックホーがここにあって、掘削するバケットがこの位置にあるというのが絵で出てくる。この数字が掘削するまでの高さ。それに合わせて機械を操作して掘削していく」
従来、斜面の掘削では熟練作業員が2人必要でしたが、この機材の導入で1人での作業が可能に。若手にも作業を任せられるようになったといいます。
ヤマグチ DX推進課・遠山浩太郎課長
「まだ乗って半年の若いオペレーターが1人でのり面を切ったという実例もある」
Q.「これまではどのくらい経験が必要だった?」
「10年とか」
霧島市に本社があるヤマグチでは、8年前にICTの専門部署を立ち上げました。背景にあるのが人手不足と高齢化です。
ヤマグチ・山口秀典副社長
「働き手が劇的にV字回復して人が増えることは絶対にない。今現在から色々な取り組みを進めていかないと10年後15年後にインフラを守るという建設産業の使命が果たせなくなってくる」
全国で建設業に従事する人の数は、この20年で100万人ほど減少。55歳以上の割合も10%以上増加しています。鹿児島県内の現状はさらに深刻で、6割近くが50代以上です。
この会社では測量にも最新の技術が使われています。
ヤマグチ DX推進課 遠山浩太郎課長
「写真をパソコン写真解析ソフトに取り込むと、3Dのデータができる」
ドローンで撮影した画像を専用ソフトで読み込むと、現場の3Dデータが作成され、自動で測量が行われます。従来2週間ほどかかっていた測量作業が、わずか1~2日に短縮されたといいます。
人手不足に対応する形で進むICT化。2023年、薩摩川内市には建設業関係者がICTの研修を受けられる県内唯一の施設がオープンしました。
鹿児島市の商社が立ち上げたもので、建設会社の従業員が実際に機械を使いながらICTを使った建設技術を学びます。
久永 営業部・川畑政和部長
「実際に体験できる。一から技術を習得できるというので喜ばれている。
最初はなかなか浸透せずに大変だったが、今は(予約が)ずっと埋まっている状態」
一方、ICTも万能というわけではありません。
米盛建設 機動部・松元勇一課長
「スケールの小さい現場なので、どうしても人の手が必要」
こちらで行われているのは道路の舗装工事。この現場は規模が小さく、ICTを導入する費用に対して効果が見合わないそうです。
そこで重宝されるのが、外国人労働者です。
Q.「ベトナムと鹿児島はどっちが暑い?」
「ベトナムのほうが暑い」
こう話すのはベトナム人のファム・ヴァン・タンさん。技能実習生として4年前に鹿児島に来ました。
ファム・ヴァン・タンさん(ベトナム)
「最初の頃は勉強が大変だった。優しい。みんないろいろ教えてくれた」
鹿児島市の米盛建設では2017年から外国人の採用を積極的に行っていて、今は13人の外国人が働いています。
米盛建設機動部・松元勇一課長
「今、私の部署も30人くらいいるが、ほとんど高齢が近づいていて、タンくんみたいな人に来てもらって、若いバイタリティーのある人たちが頑張ってくれて助かっている」
会社には「高度人材」と呼ばれる日本人と変わらない雇用形態で働く外国人もいます。
ファン・ブー・フィー・ホアンさんは鹿児島大学の博士課程で建築を学んだ後、4年前に米盛建設に就職、今は1級建築士の資格取得を目指しながら業務に励んでいます。
米盛建設 建築部・吉盛要副部長
「長く技術者として働いてもらえるのが一番助かる」
Q.「長くいてほしい」と言われたが?」
ファン・ブー・フィー・ホアンさん
「ベトナム支社長に!」
外国人に長く働いてもらうための工夫も欠かせません。
「こんにちは元気?」
「元気です」
会社の寮には、日本での生活に不安を感じないように、定期的に担当者が訪れ、悩みを聞いたり、勉強を教えたりしています。
米盛建設 海外実習生担当・前田康也さん
「特定技能外国人の採用を図っていく。これに加えて高度人材の採用も図っていく。当社で長く働いていけるような社内の環境整備が重要な課題と認識している」
人手不足に対応するため大きく変わる建設業。
ICT化の推進に外国人材の活用、公共工事や災害復旧など現場が減らない中で、それを止めないための各社の努力が続いています。
2024年5月、厚生労働省は各業界の労働者の過不足状況を調査しました。
調査では「人手不足」と回答した割合から「過剰」と回答した割合を引いた「人手不足感」が算出されています。
たとえば専門・技術サービス業では「人手不足」58%に対し「過剰」1%で57、運輸業・郵便業ではその数値が55となっています。
中でも「人手不足」60%に対し「過剰」1%で「人手不足感」60となっているのが、建設業です。
深刻な人手不足にあえぐ中、建設業界では人手不足にどう対応しているのか。各現場の取り組みを追いました。
鹿児島県霧島市の工事現場。山を切り崩し、新たな道路を造っています。
現場で使われているバックホーと呼ばれる重機には最新の技術が搭載されています。作業員がディスプレイの表示画面について説明してくれました。
「掘削する面がこのピンクの線。バックホーがここにあって、掘削するバケットがこの位置にあるというのが絵で出てくる。この数字が掘削するまでの高さ。それに合わせて機械を操作して掘削していく」
従来、斜面の掘削では熟練作業員が2人必要でしたが、この機材の導入で1人での作業が可能に。若手にも作業を任せられるようになったといいます。
ヤマグチ DX推進課・遠山浩太郎課長
「まだ乗って半年の若いオペレーターが1人でのり面を切ったという実例もある」
Q.「これまではどのくらい経験が必要だった?」
「10年とか」
霧島市に本社があるヤマグチでは、8年前にICTの専門部署を立ち上げました。背景にあるのが人手不足と高齢化です。
ヤマグチ・山口秀典副社長
「働き手が劇的にV字回復して人が増えることは絶対にない。今現在から色々な取り組みを進めていかないと10年後15年後にインフラを守るという建設産業の使命が果たせなくなってくる」
全国で建設業に従事する人の数は、この20年で100万人ほど減少。55歳以上の割合も10%以上増加しています。鹿児島県内の現状はさらに深刻で、6割近くが50代以上です。
この会社では測量にも最新の技術が使われています。
ヤマグチ DX推進課 遠山浩太郎課長
「写真をパソコン写真解析ソフトに取り込むと、3Dのデータができる」
ドローンで撮影した画像を専用ソフトで読み込むと、現場の3Dデータが作成され、自動で測量が行われます。従来2週間ほどかかっていた測量作業が、わずか1~2日に短縮されたといいます。
人手不足に対応する形で進むICT化。2023年、薩摩川内市には建設業関係者がICTの研修を受けられる県内唯一の施設がオープンしました。
鹿児島市の商社が立ち上げたもので、建設会社の従業員が実際に機械を使いながらICTを使った建設技術を学びます。
久永 営業部・川畑政和部長
「実際に体験できる。一から技術を習得できるというので喜ばれている。
最初はなかなか浸透せずに大変だったが、今は(予約が)ずっと埋まっている状態」
一方、ICTも万能というわけではありません。
米盛建設 機動部・松元勇一課長
「スケールの小さい現場なので、どうしても人の手が必要」
こちらで行われているのは道路の舗装工事。この現場は規模が小さく、ICTを導入する費用に対して効果が見合わないそうです。
そこで重宝されるのが、外国人労働者です。
Q.「ベトナムと鹿児島はどっちが暑い?」
「ベトナムのほうが暑い」
こう話すのはベトナム人のファム・ヴァン・タンさん。技能実習生として4年前に鹿児島に来ました。
ファム・ヴァン・タンさん(ベトナム)
「最初の頃は勉強が大変だった。優しい。みんないろいろ教えてくれた」
鹿児島市の米盛建設では2017年から外国人の採用を積極的に行っていて、今は13人の外国人が働いています。
米盛建設機動部・松元勇一課長
「今、私の部署も30人くらいいるが、ほとんど高齢が近づいていて、タンくんみたいな人に来てもらって、若いバイタリティーのある人たちが頑張ってくれて助かっている」
会社には「高度人材」と呼ばれる日本人と変わらない雇用形態で働く外国人もいます。
ファン・ブー・フィー・ホアンさんは鹿児島大学の博士課程で建築を学んだ後、4年前に米盛建設に就職、今は1級建築士の資格取得を目指しながら業務に励んでいます。
米盛建設 建築部・吉盛要副部長
「長く技術者として働いてもらえるのが一番助かる」
Q.「長くいてほしい」と言われたが?」
ファン・ブー・フィー・ホアンさん
「ベトナム支社長に!」
外国人に長く働いてもらうための工夫も欠かせません。
「こんにちは元気?」
「元気です」
会社の寮には、日本での生活に不安を感じないように、定期的に担当者が訪れ、悩みを聞いたり、勉強を教えたりしています。
米盛建設 海外実習生担当・前田康也さん
「特定技能外国人の採用を図っていく。これに加えて高度人材の採用も図っていく。当社で長く働いていけるような社内の環境整備が重要な課題と認識している」
人手不足に対応するため大きく変わる建設業。
ICT化の推進に外国人材の活用、公共工事や災害復旧など現場が減らない中で、それを止めないための各社の努力が続いています。